近世
啓蒙思想
別名: 啓蒙主義・Enlightenment
関連国・地域: FR, GB, DE
17〜18世紀のヨーロッパで広まった思想潮流。理性による批判を通じて、迷信や偏見、既存の権威から人間を解放し、社会を改良できると考えた点に特徴がある。ニュートンに代表される自然科学の成果と、経験を知識の源とするロックの哲学が土台となり、人間社会もまた理性によって法則的に理解し改善できるという確信が広がった。イギリスではロックが社会契約と抵抗権の考えを示し、フランスではモンテスキューが『法の精神』(1748年)で権力分立を説き、ヴォルテールが宗教的寛容と言論の自由を訴え、ルソーが『社会契約論』(1762年)で人民主権と一般意志の理念を展開した。ディドロとダランベールが編集した『百科全書』(1751〜1772年)は当時の学問と技術の知識を集大成し、新しい思想を広める役割を果たした。スコットランドではヒュームやアダム・スミスが人間の本性や経済の仕組みを論じ、ドイツではカントが「啓蒙とは何か」(1784年)で、他人の指導によらず自分の理性を用いる勇気を持つことこそ啓蒙だと述べた。これらの思想はサロンやコーヒーハウス、書物や新聞を通じて読書する公衆のあいだに広まり、プロイセンのフリードリヒ2世やオーストリアのヨーゼフ2世のように、上からの改革に啓蒙の理念を取り入れる君主も現れた(啓蒙専制君主)。アメリカ独立宣言(1776年)やフランス人権宣言(1789年)に見られる自然権・国民主権の理念は啓蒙思想の影響を色濃く示しており、近代の憲法や人権思想の源流の一つに位置づけられている。